記事の監修
S.Sato
記事の監修
S.Sato
マネジメント&イノベーション事業部 開発部/2グループ グループマネージャー
資格:Microsoft Office Specialist Master 2007、ITパスポートなど
2022年よりMicrosoft365とPowerPlatformの案件を担当。
それ以前は業務・Web系システムを要件定義からリリースまでの開発に従事。
IT業界歴15年の経験を活かし、PJを牽引し後続の育成にも力を注ぐ。
趣味は散歩で、思考が煮詰まった際には、近所の緑道を散歩し、新たな発見や自然からのインスピレーションを受けている。
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目次
「工数削減のためにツールを導入したのに、思ったほど効果が出ない」
そんな悩みを抱える企業は少なくありません。業務効率化を目的に自動化ツールやクラウドサービスを導入しても、現場の作業量が減らない、運用が定着しないといった課題が残るケースが多く見られます。
ツール導入がうまく機能しない原因は、ツールそのものではなく、業務プロセスの見直しや運用体制の整備が不十分な点にあります。成果を出している企業は、仕組みの設計から改善サイクルの構築までを計画的に進めています。
本記事では、工数削減を目的とした取り組みを成功に導くために必要な考え方と実践ポイントを解説します。自社の課題を整理し、効果的な仕組みづくりを進めるヒントとしてお役立てください。
工数削減とは|単なる「作業スピード化」ではない

「工数削減」とは、単に作業時間を短縮することではなく、業務全体の流れを最適化し、生産性を高めることを指します。ツールを導入して一時的に時間を削減できても、根本的な仕組みが変わらなければ効果は長続きしません。ここでは、工数削減の本来の目的と、「効率化」と「省力化」の違いを整理していきます。
工数削減の本来の目的
工数削減の目的は、単純に作業を減らすことではなく、限られたリソースでより大きな成果を生み出すことにあります。業務のムダを減らし、担当者がより付加価値の高い仕事に集中できる環境を整えることが、本質的なゴールです。
たとえば、経理業務で請求書の入力や確認を自動化すれば、手入力にかかっていた時間を削減できるだけでなく、その分を「分析」や「コスト削減施策の立案」など、経営に貢献する業務に充てられます。単に「削る」のではなく、「生み出す時間を増やす」ことが工数削減の真の目的です。
また、工数削減を進めることで、担当者の残業削減や働き方の柔軟化にもつながります。結果的に、従業員満足度の向上や離職防止といった副次的な効果も期待できるのです。つまり工数削減とは、企業全体の成長を支える「時間の再配分戦略」と言えます。
「効率化」と「省力化」の違いを理解する
工数削減を考えるうえで混同されやすいのが、「効率化」と「省力化」の違いです。効率化は、同じ成果をより少ない手順や時間で実現することであり、省力化は、人手を減らして作業負担を軽くすることを意味します。
省力化を重視しすぎると、短期的にはラクに見えても、担当者しかわからない手順が増えたり、属人化が進んだりして、長期的には非効率になることもあります。
一方、効率化は業務フロー全体を最適化する考え方であり、ツール導入をきっかけに「どの工程を残し、どの工程を自動化すべきか」を見直すことが重要です。
つまり、工数削減を成功させるには、「省力化=人を減らす」ではなく、「効率化=仕組みを整える」という視点で全体を設計する必要があります。人とツールがそれぞれの強みを発揮できる仕組みを整えてこそ、持続的な工数削減が実現します。
ツールを導入しても工数削減が進まない3つの理由

「工数削減のためにツールを導入したのに、思ったほど成果が出ない」という声は少なくありません。その原因は、ツールそのものの性能ではなく、導入の前後にある「仕組みづくりの欠如」にあります。ここでは、工数削減がうまく進まない代表的な3つの理由を整理してみましょう。
1. 現場の業務フローを見直さずにツールを導入している
最も多い失敗が、現状の業務プロセスを整理しないままツールを導入してしまうケースです。本来、工数削減は「ムダな工程をなくす」ことから始まるべきですが、業務の流れを把握せずにツールを乗せても、非効率な部分がそのまま残ってしまいます。
たとえば、紙ベースの申請書をそのままデジタル化しても、承認ルートや入力項目が過剰なままでは負担は減りません。むしろ「システムの操作が増えただけ」で、以前より手間が増えることもあります。
重要なのは、ツール導入の前に「どの作業を減らすのか」「どの工程を自動化すべきか」を明確にし、
その上でシステムに最適化した業務フローを再設計することです。
2. ツールが“現場の実態”に合っていない
次に多いのが、導入したツールが現場の業務や担当者のスキルに合っていないケースです。機能が豊富すぎるツールや、操作が複雑なシステムを導入してしまうと、現場が使いこなせず、「結局Excelでやった方が早い」となることも珍しくありません。
また、現場の声を十分に反映しないまま選定を進めると、「想定していた業務に合わなかった」「部署ごとに使い方がバラバラ」といった課題が発生します。この結果、せっかくのツールが十分に活用されず、一部の担当者だけが使っている“限定的なシステム”になってしまうのです。
工数削減を実現するには、現場の実態を丁寧にヒアリングし、ツールの操作性や運用ルールを“現場に合わせる”視点が欠かせません。どれだけ優れたツールでも、実際に使う人が「便利」と感じなければ、成果は上がらないのです。
3. 導入後の運用・定着支援が不足している
3つ目の理由は、ツール導入後のフォロー体制が不十分なことです。新しいシステムを導入しても、利用ルールや教育が整備されていなければ、現場に定着しません。
導入直後は使われても、担当者の異動や業務変更によって運用が崩れ、「使い方がわからない」「誰もメンテナンスできない」といった事態に陥るケースもあります。
また、業務は常に変化します。導入当初に最適だった設定やフローも、時間の経過とともに見直しが必要です。ところが、導入支援だけで終わり、運用・改善フェーズまでサポートしないケースが多く、
結果的にツールが“形だけ”の存在になってしまいます。
工数削減を持続的に実現するためには、導入後の定着支援・運用改善をセットで考えることが重要です。運用ルールの整備や定期的な効果検証、担当者教育などを継続することで、ツールは初めて「現場に根づく仕組み」として機能します。
成果を出す企業が実践している「仕組みづくり」のポイント

ツールを導入しても成果を出せる企業と出せない企業の違いは、「仕組みを整えているかどうか」にあります。工数削減を一時的なプロジェクトで終わらせず、継続的な改善につなげるには、導入前後の取り組み方に明確な戦略が必要です。ここでは、成果を出す企業が共通して実践している3つのポイントを紹介します。
業務プロセスの見直しから始める
工数削減を成功させている企業は、まず現状の業務プロセスを丁寧に可視化しています。どの作業にどれだけ時間がかかっているのか、誰がどの工程を担当しているのかを明確にし、「そもそもその作業が本当に必要か」を検討するところからスタートします。
たとえば、毎日の報告書作成や二重チェックなど、習慣的に行っている業務が本当に成果に結びついているかを見直すことで、不要なタスクを削減し、効率化の優先順位をつけることができます。また、現場の担当者を巻き込みながらヒアリングを行うことで、実際の課題を把握しやすくなります。ツール導入の前段階で業務を整理・可視化することが、工数削減を成功させるための確実な第一歩となります。
全体最適を意識した改善設計
工数削減を効果的に進めるためには、部署単位ではなく全体の流れを最適化する視点が欠かせません。部門ごとの改善に偏ると、情報共有や承認の流れが分断され、かえって非効率になる場合があります。
たとえば、営業部門が独自のフォーマットで顧客情報を管理し、経理部門がそのデータを再入力している場合、入力作業を自動化しても工数はほとんど変わりません。データを一元管理し、RPAやクラウドツールと連携させることで、重複作業をなくし、承認フローのスピードを高めることができます。
成果を上げている企業は、システム導入を単発の取り組みではなく、業務全体を最適化するプロジェクトとして位置づけています。部門横断で情報を共有し、全社的に業務効率を高める仕組みを整えることで、長期的な成果につなげています。
小さく試して改善を積み上げる
工数削減を一度に大規模に進めようとすると、現場の負担が大きくなり、導入の途中で頓挫するリスクがあります。成果を出している企業は、小規模な単位で試しながら改善を重ねる段階的な導入を重視しています。
一部のチームや特定業務を対象に試験導入(PoC)を行い、課題を早期に発見して修正します。その結果をもとに設定を最適化し、マニュアルや教育体制を整えたうえで全社展開することで、現場の混乱を抑えながら定着率を高めています。
段階的な導入によって、改善効果を可視化でき、関係者の納得を得やすくなります。工数削減は一度の導入で完結するものではなく、試行と改善を継続する仕組みとして運用することが成功の条件です。
ツール導入を成功に導く3つのステップ

工数削減を実現するためのツール導入には、明確な手順と継続的な改善が欠かせません。多くの企業では「導入すること」自体が目的になりがちですが、成果を出すためには導入前後の準備と運用設計が重要です。ここでは、ツール導入を成功に導くための3つのステップを解説します。
1. 現状分析と課題の可視化
ツール導入を検討する際、まず行うべきは現場の実態を把握し、課題を可視化することです。現状の業務を正確に理解しなければ、導入しても期待した効果は得られません。
具体的には、作業ごとの所要時間、担当者の人数、エラー発生率などを数値化し、どの工程にムダが多いのかを明らかにします。また、関係部署へのヒアリングを行うことで、業務の重複やボトルネックを把握しやすくなります。
可視化されたデータをもとに、改善の優先順位を決定することで、ツール導入の目的が明確になります。「どの業務を効率化するのか」「削減した時間をどの業務に充てるのか」を整理することが、工数削減の出発点です。
2. 適切なツール選定と導入計画
課題が整理できたら、次に重要なのが自社に合ったツールの選定と導入計画の立案です。ツールの機能や価格だけで判断せず、現場の運用フローや担当者のスキルに合っているかを検討することがポイントです。
機能が多すぎるツールを選ぶと、操作が複雑になり現場の負担が増える場合があります。反対に、簡易すぎるツールでは将来的な拡張が難しくなります。導入後の運用やサポート体制、既存システムとの連携も含めて総合的に評価することが求められます。
導入計画の段階では、導入範囲・スケジュール・担当者の役割を明確にし、トレーニングやマニュアル整備を同時に進めることが成功への近道です。導入を「イベント」ではなく「プロセス」と捉え、社内全体で理解を深めることが重要です。
3. 運用・改善の定着サイクルをつくる
ツール導入後は、運用の定着と継続的な改善を行う体制を整えることが欠かせません。導入直後に効果が出ても、運用ルールが曖昧なままでは成果が長続きしないからです。
まず、利用ルールや権限設定を明文化し、誰でも同じ手順で操作できる仕組みを構築します。そのうえで、定期的に利用状況や削減効果を分析し、改善点を洗い出します。ツールの設定を変更したり、新しい機能を活用したりすることで、業務効率をさらに高めることが可能です。
また、担当者が交代しても運用が止まらないよう、教育体制を整えることも重要です。効果検証と改善を繰り返すことで、ツールは単なる作業支援ではなく、組織全体の生産性を支える基盤として機能するようになります。
外部支援を活用して工数削減を加速させる

工数削減を自社だけで完結させようとすると、改善の方向性が偏ったり、限られたリソースの中で検証が進まなかったりすることがあります。実際には、第三者の専門的な視点や経験を取り入れることで、課題の把握から改善実行までを効率的に進めることが可能です。
ここでは、外部支援を取り入れる際に押さえておきたい二つの視点、「第三者視点による課題発見のメリット」と「導入から運用まで伴走支援できるパートナー選定のポイント」について解説します。
第三者視点による課題発見のメリット
外部支援を活用する大きな利点は、第三者の客観的な視点で課題を把握できることです。社内だけで業務を分析すると、日常的に行っている作業が前提条件として固定化され、本来削減できる工数を「必要な業務」と誤って判断してしまうことがあります。
外部の専門家は、他社の事例や業界全体の知見をもとに、非効率な工程や重複したフローを客観的に指摘できます。また、情報共有の滞りや承認プロセスの複雑化など、内部の視点では見落とされやすい問題を明確にできる点も強みです。
客観的な分析によって改善の優先度を正確に判断でき、自社では気づきにくい領域にリソースを集中させることで、工数削減の効果をより高めることが可能になります。
導入から運用まで伴走支援できるパートナーを選ぶ
外部支援を検討する際は、ツールの導入支援だけでなく、運用や定着まで一貫してサポートできるパートナーを選定することが重要です。一時的な導入サポートで終わる支援では、現場への定着が進まず、長期的な成果が得られません。
信頼できるパートナーは、業務分析からツール選定、導入設計、運用改善までを一体的に支援します。導入後のフォローアップや改善提案を継続的に行う体制を持つ企業ほど、組織に根づく仕組みを構築できます。
また、ツールの機能面だけでなく、組織文化や現場の実情を理解したうえで最適な提案ができるパートナーほど、実践的で成果の出やすい改善策を示すことができます。工数削減の取り組みを継続的に成功させるためには、課題解決を「共に進める」姿勢を持つ伴走型の支援先を選ぶことが重要です。
まとめ
多くの企業がツール導入による工数削減を目指していますが、実際には思ったほど成果が出ないケースも少なくありません。その原因は、ツールそのものではなく、業務プロセスの見直しや運用の仕組みづくりが不十分な点にあります。
工数削減を成功させるためには、現状を可視化し、課題を整理したうえで、自社に合ったツールを選定・運用することが重要です。さらに、導入後も継続的に改善を重ね、組織全体で効率化を推進する体制を整えることが欠かせません。
自社だけでの取り組みに限界を感じる場合は、業務分析から運用支援まで伴走できる外部パートナーを活用し、持続的に成果を上げる「仕組み化された工数削減」を実現していきましょう。


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